Quantcast
Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

慢性病の時代のケア

 いまは時代の転換期。医療も新しい関係性を見据えていく必要があると、過日桐生倶楽部で開かれた講演会で、慶応義塾大学の加藤眞三教授は語った。それは、私たちが日ごろ漠然と感じていることの核心が、専門家の手で論理的に整理されて、示唆に富んだ内容であった。

 相応の年齢となり、知人や友人はひとつふたつはからだの気がかりを抱え、会えば自然と健康の話になる身の回りである。

 よい治療やアドバイスを受けられたと、参考になる話はむろん多い。一方で医療者の態度に嫌な思いをした体験談や、難解な説明と同意を求められて困ったといった感想も同じようにある。また、本で読んだ話やテレビで言っていたことやインターネットなどを元に、素人があれこれと専門的な情報に立ち入って、安心したり不安になったり。恐らくそれは、どこにでも存在する日常だと思うのだ。

 転換の背景には幾つもの要素がある。例えば、科学の進歩は幸福をもたらしてくれるのかという疑問からくる専門家に対する不信感。あるいは画一的なものより多様性を尊んだり、さらにはSNSによる情報伝達の様変わりや、グローバリズムに対抗する地域社会の価値観の見直しなど。そうした流れの向かう先に男性社会から女性社会、硬直から柔軟、機械的より生物的なもの、科学技術からスピリチュアリティーへと、変化が出始めている現代だそうである。

 慢性病の時代となり、生活の場に医療が入り込み、からだの管理は患者の心がけ次第だ。慢性病の多くは安静よりも運動を必要とする。そのためにも、医師と患者の信頼関係と情報交換の充実が求められるという。

 相談できる人を持ち、難しい決断を助けてくれる人がいるという社会的関係性は、患者の健康にとって喫煙禁煙と同じくらいの影響力を持つといわれる現代だからこそ、そうした頼れる存在に医者も加わることが互いの幸せだと加藤さんは言った。

 進めたいのは、忙しすぎる専門医に患者が遠慮することでもたらされるコミュニケーション不足の現状を改めて、従来の管理型の医療を協働に変えていく仕組みづくり。そして、知ることで深まってくる生への根源的な悩みを支えていけるスピリチュアルケアの態勢だとか。

 看護師の役割が一段と重要性を増して、患者がしっかり自立していける環境が目標となる。
関連記事:


Viewing all articles
Browse latest Browse all 2430

Trending Articles