その日の原稿を締め切りに間に合わせ、食堂で遅い昼食にありついていたら、隣席から子どもたちの元気な声がした。春休み中の小学生らしき3人の兄弟が、母にデザートの追加注文をねだっているらしい▼アイスがいい。いやケーキだ。パフェでしょ。3人で一つを選ぼうにも決まらない。「1人一つずつがいい」などと騒ぎ始めると、ついにお母さんが大声で怒りだした。「あんたたち、いい加減にしなさい!」▼長い沈黙の後、末っ子らしき男の子のすすり泣きが聞こえた。上の兄弟2人は不満そうににらみあっている。せっかくの家族そろっての外食が台無しだ。ひと昔前のわが家を見るようで、思わずほほ笑んでしまった▼私事で恐縮だが、昨春と今春で2年続けてわが子が家を巣立ち、小学6年生の末っ子との3人暮らしになった。家の中がやけに広く感じる違和感と、兄弟どうしの話し声がしない静寂に、慣れない日々が続いている▼巣立った当人たちは意気揚々。親の気持ちなど知る由もない。振り返れば自分もそうだった▼きのうの退職職員ときょうの新採用職員。桐生市役所で辞令交付式を取材しながら、旅立つ人、見送る人、迎える人。それぞれに思いをはせた。(針)
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