日伊国交樹立150年を記念して、大正から昭和初期に大流行した「銘仙」がイタリアに渡る。21日から6月4日までローマ日本文化会館で開催される「VIVID MEISEN(ヴィヴィッド銘仙)」展に桐生織塾や足利、秩父のコレクターが所蔵する銘仙を出品、きものに表現された鮮やかで大胆な色柄、その技法を披露する。主催はローマの同館と足利市立美術館。蚕種から始まった日伊の縁が絹織物でつながり、150年後に再確認される。
銘仙は養蚕が盛んだった北関東産地で盛んに生産された先染め平織りの絹織物。もとは養蚕農家が出荷できないくず繭を自家用に織っていた絹布だが、西洋文化が入り、女性たちが学校や職場に出るようになって、日本の伝統にはない斬新で自由な色柄の安価な銘仙が大量に生産された。各産地で競い合って技術革新も行われた。
足利は宣伝戦略にも優れ、一流日本画家に依頼した美人画のポスターや絵はがきを全国展開。これらを足利市立美術館で収蔵する。大森哲也館長(57)は「銘仙のデザインは西洋の新しい芸術運動の表現を積極的に取り入れている」とし、今展では足利だけでなく伊勢崎、秩父など他産地もふくめて広く銘仙の魅力を紹介する。
また染織史を研究する新井正直さん(59)=桐生市西久方町二丁目=は「併用、半併用、解(ほぐ)しの技法は、絣(かすり)模様を型紙で染めるようになって、絵画に近い自由で大きな表現ができるようになった」と語る。22日に両氏の講演が行われる。
今展企画会社の沢辺満智子さん(29)は「イタリアでは和食、マンガ、コスプレ、春画など日本文化ブーム。きものというとサムライか友禅など高級イメージが強いが、サブカルチャーを好む層には銘仙のポップなファッション性や、着ていた女性たちのエネルギーなど親近感を持って見られるのではないか」と話す。
ローマで展示する銘仙は30点(うち桐生織塾から17点)。所蔵品を送り出す織塾の新井求美塾長(54)は「ダブルイカット(たてよこ絣)の日常着は珍しいと思う。イタリアの人の反応が楽しみ」という。
足利市立美術館では10月22日~12月25日に凱旋(がいせん)展を開催することになっており、銘仙を着た美人画の原画や美術家による図案などもあわせ、より大規模な展覧会とする計画だ。
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