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燃費データ偽装に思う

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 自宅で血圧を測るときは、何度か試して、標準値に近い数値が出た時点でやめている。そういう自己判断は正しくないと分かっていても、「それだっていまの値だから」と、適当な安心感につい浸ってしまう同輩は案外 多いのではないだろうか。

 燃費性能の不正操作を認めた三菱自動車工業。その手口を新聞で読んで「おいおい」とあきれてしまったのは、この一流メーカーが届け出た数値が、自宅での血圧測定のノリとさして違いがなかったからである。

 データ偽装が判明した軽自動車は4車種。燃費性能は国土交通省が審査するが、その基になる走行抵抗数値は言い値だそうで、メーカーは通常、複数回の走行試験をやって中央値を採用することになっているが、要はこの段階で燃費を良く見せる数値を使ったということだろう。

 血圧の自己申告数値が診断に影響することはない。なぜなら医師はそんな申し出におかまいなく、新しい状態を測定し直すからだ。しかし新車の数は膨大で数値を測り直すのは容易ではない。だから、提出された数値は正しいという前提に立つ。今回はその信頼が裏切られた。

 対象は62万台にのぼるというから消費者は多大な迷惑を被って、企業の信用は大きく傷つくことになるだろう。しかも今回の不正操作が提携他社からの指摘で発覚し、発表に至ったという経過に関しても、たいへん残念であるといわざるを得ない。

 三菱自は過去にも大規模なリコール隠しがあり、体質改善を進め、立て直しを図ってきた。

 しかし、発表会見に臨んだ会社のトップは「自浄作用が働いていない」と、そう認めざるを得なかった。これでは最前線で消費者の信頼回復に努めてきた販売店が何とも気の毒である。

 不正の背景は何か。全容解明は急がねばならないが、私たち消費者としてはこれを一メーカーの話に終わらせたくはない。

 この際、自動車産業にかかわるすべての企業に、自動車が現代の暮らしの中でどう使われているか、もう一度しっかりその目で見直してもらいたい。

 同じ日の全国紙は熊本地震1週間の刻一刻を報じている。物資支援に復旧活動にあるいは緊急避難のよりどころとして車は重宝に使われ、中にはその利便性が裏目となるケースも出た。

 安全安心を目指して営々築いてきた日本車の信頼。その道程の初心を思い起こしてほしい。
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