どんな場所でも忙しくとも、食事の前には両手を合わせて「いただきます」を心がけている。両手が合わせられないなら、声を出せないなら、それはそれなりに、心の中で「いただきます」。自分の中だけのゆるーい決まりごと▼だけどつい先日、テレビ番組に気を取られて「いただきます」をすっかり忘れてしまって、思い出したのは「ごちそうさま」のとき。遅い昼ご飯をとろうと入った食堂のテレビで流れていたのは、被災した熊本の様子だった▼崩れた山の斜面と傾いて倒壊した家々、続く捜索活動。不安な日々を過ごす人の表情。そして、ポリ袋で炊き上げたご飯を配る自衛 隊員。隣近所で食材を持ち寄って、大鍋で炊き出しをして助け合う地元の人たち▼空腹を満たすことすらままならない被災地の状況を、テレビ画面で見ながら食事をする。なんだか自分が薄情者になった気がしたけれど、できることはあんまりないのが現実。だけど全くないわけでもないから、とりあえず足場を固めて日常をきちんと送ることが今の役割だ▼きちんとご飯を食べて、目の前のことを丁寧にこなしていく。仕事も、生活も。そして食べられることに感謝して、やっぱり両手を合わせるのだ。（並）
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