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支援の仕組みを厚くする

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 食品関連企業や一般家庭などで、まだ食べられる食料を廃棄することを「食品ロス」という。そんな食料を捨てずに有効活用して、食料の入手が困難な人たちのために役立てようという民間団体による取り組みがいま、全国各地で進んでいる。

 フードバンク活動と呼ばれる取り組みで、日本語でいえば「食品銀行」となる。群馬県内では館林市市内に拠点を置くNPO法人三松会が「フードバンク北関東」を立ち上げ、2010年から活動を続けている。

 食品衛生上は食べても安全なのに、かたちや大きさ、色づきといった、業界や企業が定めている規格から外れた食料を無償で譲り受け、児童養護施設をはじめ高齢者施設、障害者施設、学童クラブなど、支援を求めている社会福祉施設や生活困窮者のもとに分配していく。

 フードバンク北関東では賞味期限が残っていること、未開封であることなど、安全確保に必要な最低限のハードルを設け、それをクリアした食品を預かることにしている。これまでに50社近い企業から協力を取り付けており、県内外の施設や団体に食料を受け渡す流れを確立しているのだという。

 経済格差が広がる中で、日々の食料を確保できない状況が生まれているのだとすれば、文字通り死活問題である。こうした生活困窮者の生存権を保障することは、本来行政の役割なのだろうが、そこにはおのずと限界もある。ならばフードバンクのような民間援助団体を育ててゆくことが、私たちの暮らしのセーフティーネットを手厚くすることにもなるのではないか。

 熊本地震の被災地では、生活物資の不足がクローズアップされた。フードバンク北関東ではアースデイin桐生といったイベントなどを活用し、市民から食料を譲り受け、被災地に近いフードバンクと連携して被災者支 援を展開している。今後どこで被災をしても、食料を橋渡ししてゆく支援の仕組みは有効に機能するのではないかと、期待を抱かせる展開でもあった。

 農水省の2010年度統計によると、国内の年間食品廃棄量のうち、食品ロスは500万~800万トンともいわれる。食品ロス見直しの動きは主婦たちを中心に昔から地道に続けられてきた。こうした長年の運動の延長線上に、より大きな視点で新しい仕組みづくりが広がっているのだと、改めて思うのだ。
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