真っ赤に輝くミニトマトをスーパーで見た。熊本産だ。「よく来たね」と手にとる。全国一のトマト産地は出荷最盛期を迎えているが、地震で農家やパート作業員が避難していたり、施設や選果機が壊れたり、流通網も混乱している。そんな中ここに届いたと思うと甘みもひとしおである▼桐生からは29日未明、布を積んだトラックが熊本に向かう。避難所に設置する間仕切り用だ。建築家の坂茂さんが開発した、紙管と布のシステム。テキスタイルプランナー新井淳一さんは1980年の「民族衣裳と染織展」に原点を見る。桐生の千代田紙業に紙管を発注してきた▼坂さんと新井さんの久しぶりの対面は国立新美術館、三宅一生展の内覧会だった。それから1カ月後に熊本地震が起こるとは、思いもよらない。東北で新潟で神戸で、ルワンダでトルコでインドで“紙の建築”を手掛けてきた坂さんの動きは速かった▼長引く避難所の生活を少しでも楽にと、桐生の布がおくられる。ピンクや水色や淡緑、水玉や花柄、チェックもある。現場調整は困難かもしれないが白一色の無機質な空間から、そこで生活する人の好みの布が使えたらいい。共用の更衣室や授乳室などの目印となったらいいと願う。(流)
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