どうにもできない出来事と折り合いをつける方法はいくつかあって、野山に行くのもそのひとつ。落ち込んで嫌な自分になったとき、大切な人と二度と会えないと知ったとき。小さな生き物を眺める。その姿は優しく果敢で、したたかだ▼取材先で3歳の男の子に会った。指で「3」を作るのすら難しい彼が、小さな両手でやわらかく何かを包み込んで差し出す。指の間からのぞくのはアマガエルの顔と脚。「あら、お上手ね」なんて感心したのはつかの間。だって中には4匹もいたんだもの。そんな小さな手で、どうやって捕まえたの▼びっくりするまま受け取って、容器に移して返すと彼はご満悦。大切に大切に観察する▼彼と仲良くなれて、風の流れる草っぱらで穏やかな秋を過ごせたのがうれしい。同時に、カエルにあたたかなまなざしを向ける彼に、胸がきゅうっと鳴った▼まだ始まったばかりの人生。何事もないのが一番だけど、この先、悔しさをかみしめる瞬間やつらい別れがあるかもしれない。そんなとき、小さな生き物がそばにいて、わずかでも彼の支えになっていればいいな▼そんな大げさなものではないけれど、別れ際、そっと触れられた手にささやかな祈りを込めた。(並)
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優しく果敢
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