染色整理業の傍ら、絹抽出成分を配合した化粧品事業を展開するアート(桐生市相生町二丁目、伊藤久夫社長)がせっけんの自家製造に乗り出す。本社工場隣に「桐生絹せっけん工房」を設立し、天然油脂に絹たんぱく質のセリシンやフィブロイン、梅田の桑茶や黒保根のはちみつなどを練り込み、手作りする。「生きぬせっけん」の名称で9月から販売を予定。工房の見学や製造体験も将来的に受け入れる計画だ。
同社は絹抽出成分を化合繊に付与する加工法を確立したのをきっかけに、県産繭からのセリシン抽出に乗り出し、2010年に化粧品分野に進出した。シルクをキーワードにした展開を進める中で、安全なせっけんを自ら生産しようと決断した。
「桐生絹せっけん工房」は今月稼働を開始。オリーブ油とパーム油、ココナツ油にシルクエキスを配合し、原料を混ぜたときの反応熱を利用した製法により成分を変質させることなく固化させる。温度と湿度を一定に保った空間で1カ月間熟成させ仕上げる。無添加で食用の材料を用いるため、「口に入れても安全」(伊藤社長)という。
フィブロイン抽出法で結びつきがある東京農業大学の長島孝行教授が顧問を務める六次産業(本社東京都)向けの商品供給から出発し、12月に桐生地域地場産業振興センターで開かれる「じばさん冬の市」から直接販売をスタートする予定だ。
現在は日産50個。来年中に200個まで拡大したい考え。伊藤社長は「桐生にせっけん工房があることを広めたい。ゆくゆくは工房でせっけん作り教室も開きたい」と話している。
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