「真知子巻き」と称されるファッションが戦後大流行した。映画「君の名は」のヒロインがストールを頭からかぶるように巻いた姿を女性たちがこぞってまねたのだ。そのころマフラーメーカーへと転換した松井ニット技研(桐生市本町四丁目、松井智司社長)は当時の編み組織を基に、配色やサイズに時代に合った改良を加えて復刻した。
「君の名は」はラジオ番組で人気に火がつき、1953年(昭和28年)映画化。女優の岸恵子さんが主演の真知子を演じ爆発的にヒットし、真知子巻きがブームになった。ほぼ時を同じくして、松井ニット技研も中古のラッセル編み機を導入し、それまでのトリコットからマフラー生産にかじを切った。昭和30年代にマフラーは輸出の全盛期を迎え、産地を潤した。
映画がはやった当時、松井社長は学生。家業を手伝うことも多く、「子ども心に好きだった」という初期の製品を社内に残る小さな切れ端と自らの記憶を基に再現した。レース調で手の込んだ複雑な組織が特徴で、どことなくレトロな雰囲気を漂わせる。
大きさは幅47センチ、長さ2メートル。当時よりも女性の身長が高くなっているのに合わせ、幅を広く長さも増した。オリジナルは単色だったが、濃淡2色を組み合わせてファッション性を高めた。
自社ブランドのラインアップに加え、この秋から市販する。松井社長は「受け入れられるか分からないが、人心が荒れている時代に昭和のノスタルジックな優しさを提案してみたかった」と話す。
青や紫など5色展開を予定。価格は未定。
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