中学校の修学旅行で訪れ、その神秘に魅せられたのが、岩手県岩泉町の鍾乳洞「龍泉洞」だ。世界有数の透明度というコバルトブルーの地底湖をのぞいたときの感動は、30年たった今も忘れない▼その龍泉洞が水没した。台風10号の影響で近くの川や山の水が流れ込み、地底湖の水があふれて洞の外へ噴出。再開のめどが立たない状態という▼龍泉洞の町・岩泉町では、小本川が氾濫し、グループホームの入所者9人を含む11人の犠牲者と、約800人の避難者を出す被害に見舞われた。小本川は過去にも氾濫しており、県が堤防や河川改修の工事を計画していたが、間に合わなかった▼こういうニュースを知るたび、「想定内」だったのに被害を防げなかったのかと苛立ちを禁じ得ない。そして、東北の太平洋側から上陸する異例のコースをたどった台風10号のように、自然現象は今後も私たちの想定の上をいくに違いない▼1日付「防災の日特集」でも触れたが、阪神淡路大震災で救出・救助された人の割合は「自助」が16、「共助」が3、「公助」が1だったという。この割合は現在も教訓として生きている▼要は行政に頼る前に、自分で自分を守り、地域を大事にする。改めて確認したい心構えだ。(成)
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想定の上
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