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桐生発の高強度繊維を、キヤノン財団から研究助成

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 群馬大学大学院理工学府分子化学部門の上原宏樹教授(48)は、「延伸技術と撚糸(ねんし)技術の融合による超高強度繊維の創製」をテーマとする研究に取り組んでいる。キヤノン財団(東京都)の研究助成プログラム「産業基盤の創生」に採択され、2年間で1800万円の助成金を受けた。独自に開発してきた延伸技術と、繊維産地桐生が培ってきた撚糸技術を組み合わせ、防弾チョッキや釣り糸などに用いられる超高強度繊維を安価に、安全に、簡単に製造する装置を完成させ、地場産業にも貢献したい考えだ。

 上原教授は神奈川県出身、東京理科大学、同大学院、米国マサチューセッツ大学高分子科学科研究員を経て博士課程を修了、1997年に群馬大学工学部の助手に着任。准教授から今春教授に昇任し、高分子構造物性研究室で「高分子鎖を引き伸ばして強い繊維やフィルムを作る」研究を行っている。

 これまで超高分子量ポリエチレン繊維の超高強度化技術が、釣り糸に利用されているほか、医療材料や燃料電池膜への応用、国際共同研究なども展開してきた。

 「ポリエチレンは簡単な構造で、スーパーのレジ袋など安く作られる。その分子がからまった状態から、極限まで引き伸ばして分子の向きをそろえることで、高強度繊維になる。有機溶剤に溶かして糸状に伸ばすわけだが、高価になるのが難点。分子の向きを自在にアレンジできるのがわれわれの延伸技術なので、これに撚糸技術を組み合わせて、桐生発の高強度繊維を作りたい」と上原教授。

 キヤノン財団は2008年に創業70周年を記念して設立、自然科学分野を対象とした研究助成プログラムを策定。「産業基盤の創生」では挑戦的で独創性のある萌芽(ほうが)的研究、地域貢献を目指す研究を年間十数件支援している。1件あたりの助成金額が高いのも特徴で、採択率は3%という狭き門だ。

 前年度に採択された上原教授は、研究室を訪れた財団の森岡浩美さん、半田祐一さんを案内して実験装置や学生たちの研究を紹介した。助成金による設備は年度内に完成する予定で、群大で繊維を扱う研究者は現在では少ないだけに、地場産業の活性化の一助となるよう望んでいる。
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