小籠に入れた里芋をいただいた。ツワブキのつややかな葉と黄色い花があしらわれている。謎かけに違いない。185年前の天保2年、渡辺崋山が江戸―桐生―熊谷を旅したのはちょうど今頃。熊谷で半世紀も崋山の研究をしている馬場國夫さんからの“土産”である▼芳賀徹氏やドナルド・キーン氏らの著作は読んだものの、不勉強な身には崋山が遺した「毛武游記」にでも記述があるのだろうかと想像する。国宝になった画もあるほど絵師崋山は著名だが、実作に接する機会はそう多くない。熊谷市立図書館で実現開催中の「毛武と渡辺崋山展」は貴重だ▼妹の姑の肖像は、何か言ってきそうなほど人格が浮かび上がる。渡良瀬川から上がった鮎の巨大なこと。この2点も桐生新町二丁目の岩本家で描かれたもので、実に、かかあ天下と鉱毒前の清流を象徴する絵画と見える。すでに桐生を離れてしまっているのが惜しまれる▼愛知県田原市博物館から出展された線描の「骸骨之図」。座った格好で笑っているよう。左のこめかみの穴は矢が貫通した跡か。かたや「乳犬図」は没骨法で力強くも、顔だけのぞかせる子犬が愛らしい。絵に込められた崋山の思いを、ツワブキ里芋を眺めつつ考える。(流)
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