ハロウィーンという欧州由来の風習が、日本に伝わりアレンジされて、昨今は都市部を中心に秋のイベントとして定着しつつあるようだ。桐生市でも中心市街地の3商店街が連携して、回遊型のイベント「仮装DEおいでよ桐生ハロウィン」という形で、毎年繰り広げられている。
ここ数年は回数を重ねるごとに参加者の数を伸ばしており、今年は700人近い子どもたちが参加した。父親や母親も一緒になって、仮装を楽しみつつ参加するケースも多く、大人を含めれば約1000人もの市民が商店街を歩いたわけだ。
地図を片手に協力店をめぐり、「トリック・オア・トリート(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ)」の合言葉を唱えれば、店の人から菓子がもらえる。仕掛け自体はいたってシンプルなのだが、そこには新しい人と人との関係が生まれるきっかけが含まれているようで、考えさせられる点も少なくない。
これまで知らなかった店を訪れ、初対面の店主や店員たちと目を合わせ、おそるおそる合言葉をささやいてみる。そうした小さな壁を乗り越えることで、言葉と物との交換が生まれる。合言葉を唱えるときの子どもたちの表情には、どきどきした感覚がにじみ出ているし、店主らの応対にも、和やかな場を生み出そうとする意志がにじむ。こうしたやりとりの光景全体が、柔らかくてじつにいいのだ。
回遊性のイベント自体は、ほかにもさまざまあるのだが、参加者が店主や店員らと対話をする仕掛けを持つ企画は、それほど多くはないはず。もちろん、参加する個店にとっては、売り上げに結び付けばさらにうれしいのだろうが、「初めて店内に入りました」といった父親、母親の声を聞くにつけ、桐生ハロウィンの仕掛けづくりは機能していると、そんなふうに感じた。
これから週末に向けて、桐生の市内はファッションウイークでさらに盛り上がりを見せる。大勢の人たちにまちなかを回遊してもらおうと、こちらも20年以上の歳月をかけて、主催者たちがさまざまな仕掛けを試しては、参加者たちが磨きあげ、定着してきた歴史がある。
最近はスタンプラリーのような仕掛けのあるイベントも多く人と人とが対話をするきっかけならばいくらでもある。ハロウィーンのような合言葉こそないものの、そこは気軽なあいさつから、まちの活気につなげたい。
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