一緒にいると幸せな気分になった。昔話に出てくるような、心優しいおばあちゃん。「イヤア、よく来たなあ」。柔らかで穏やかな福島弁で、いつも笑顔で迎えてくれた。大好きだった亡き祖母に瓜二つだったから、なおさら他人とは思えない親しみを感じた▼東日本大震災の津波で福島県南相馬市の自宅を流され、避難先の桐生市で今年2月に病気で亡くなった小沢勇子さん(享年83)。帰郷を断念して一家で桐生に定住したが、慣れ親しんだ故郷への思いは募る一方だった▼先週、お墓参りに南相馬市へ向かった。遺族に同乗してもらっての日帰り車旅。墓参りの同行は約3年ぶり2回目で、桐生定住を先祖に報告した前回は、おばあちゃんも一緒だったっけ▼当日は雲一つない秋晴れ。「地元に帰れて良かったな」。海を見下ろす高台の墓地で、そう思いながら手を合わせた。以前の訪問で知り合った人たちとも再会。元気で頑張っている姿を見ることもできた▼車中で話に花咲く帰りの高速道路。サイレンが鳴ったので道を譲ると、自分がスピード違反だったらしい。気のゆるみに反省。「おじいちゃんたちをしっかり頼んだよ」と、おばあちゃんから諭されたような気がした。(針)
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