小型無人機「ドローン」を活用し、深刻な漁業被害を招いているカワウの繁殖を抑えようという全国初の試みが25日、みどり市大間々町の高津戸ダム上流の渡良瀬川で行われた。県内最大のコロニー(繁殖地)がある同ダム上流の樹木にカワウが嫌がる音が出るビニールテープを張り巡らすことで、コロニーを包囲し、増殖を食い止める効果を狙う。水産庁や県の鳥獣害対策の職員らも立ち会い、画期的な“空からのカワウ対策”を見守った。
ドローンを使ったカワウ対策は、同川の漁場を管理する両毛漁業協同組合(桐生市菱町、中島淳志組合長)が、水産総合研究センター(本部横浜市)の坪井潤一研究員(36)に依頼して行ったもの。
カワウ対策の第一人者で、テープ作戦を考案した坪井さんが、釣りざおを使ってテープを木に引っ掛けていた従来の方法より飛躍的に作業効率が上がるとして、同センターにドローンを導入。それを知った中島組合長(43)が、高津戸での作業を依頼した。
作業は、川岸の茂みに広がるコロニーの周辺の木にテープを張り、コロニーが拡大しないようにするのが狙い。生分解性のビニールテープをドローンで上空約50メートルまでつり上げ、縦横に飛びながら枝に引っ掛けて、延べ約360メートルのテープを張り巡らせた。風が吹くとテープが鳴り、その音を嫌がってカワウが寄り付かなくなる仕組みだ。
坪井さんは「人が近づけない場所や高さで作業ができる。飛ぶ鳥に飛び道具で対抗できることが画期的」とドローンの有用性を強調。「新たなカワウ対策として、被害に悩む全国の漁協に普及できれば」と語る。
一方で、ドローンは12月10日施行の改正航空法で、家屋密集地などでの飛行が禁止される。坪井さんは、「ドローンをカワウ対策に使えるよう、水産庁と国交省が協議していると聞いている」といい、安全な利用への条件整備を期待している。
県鳥獣被害対策支援センターなどによると、高津戸のカワウのコロニーは2000年前後から確認され、今年7月の調査では過去最多の580羽を数える県内最大規模になっている。
個体数の増加に伴い、ヤマメやアユなどの食害も深刻化。県全体の14年度の漁業被害は1億7900万円に上る。県はカワウ適正管理計画(15~18年度)を策定し、個体数を現在の3割減の06年度水準(年平均668羽)に減らす目標を掲げている。
中島組合長は「カワウをただ追い払っても分散するだけで問題解決にはならない。コロニーがこれ以上広がらないように、ここで増殖を食い止めたい」と話す。
関連記事: