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Channel: ウェブ桐生タイムス
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物語の在りか

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 生き物を眺めるのが好きだ。彼らには彼らの世界や価値観があって、ヒトから見たら目立たない存在だとしても、自分の物語を抱えて、えっちらおっちら生活している。その姿に心ひかれるのだ▼そんな彼らが排泄する「ふん」にも物語があると知ったのは、桐生自然観察の森で開かれた高槻成紀さん(麻布大学いのちの博物館)の「哺乳類の調べ方講座」。生き物のふんを調べることで、その動物の基本的な食性がわかるのはもちろん、季節で変わる食べ物の内容、生息している自然環境を知ることができるという▼食べ物を得る場所が樹上か地上か、といった空間利用も推測できるから、彼らの生きざまの一端をのぞき見している気分。「もういらない」と体外に出されたふんが、たくさんの情報を持っていて、この目が見ている以上に、世界には広がりと奥行きがあると教えてくれた▼「普通の生き物が普通に暮らす姿を観察することの大切さ」について語られた講座。“普通”には、生はもちろん死も排泄物も含まれていて、きれいなばかりではない。けれど、汚い臭いと見ないようにしているものの中に大切なものが隠されていて、それこそが、生き物それぞれが抱える物語だったのだ。(並)
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