小さいころ、家にはかつお節削り器があった。かつお節を削るのは祖母や母の仕事だったが、たまに削らせてもらえることも。刃のある道具を扱うのは怖いが、面白く、認められた喜びもあった▼桜木小学校での「ものづくり体感事業」。5、6年生が職人に教わりながら作品づくりを通して、大工や板金、和裁、建具の技に触れた▼大工の班に女の子がいたり、和裁の班に男の子がいたり、そして意外に筋が良かったりして「性差」は後天的に生まれるものだなと感じる。ただ、かつお節削り器がわが家から消えたように、男女問わず、個々の得意分野を知る機会も失われている▼大きな自動車事故が続いている。福岡のタクシー事故は運転手の操作ミスか、車の問題か、原因はまだ分からないが、自動運転車に期待する声が大きくなってきた。自動ブレーキの技術は年々精度が上がり、飛び出し実験などを見ると、もう人間が操作しない方がいいのではと感じるほどだ▼しかし、いざ問題が起こった場合のことを考えると不安が募る。電子化が進む現代、身の回りにある道具に不具合が生じたとき、自分で対処できるものがいくつあるだろう▼身体が経験する機会を失いたくはないのだ。(野)
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