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暖かい冬の始まり

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 農家の人と立ち話をしていると、今年は干しダイコンづくりに難儀しているのだと弱音がこぼれた。えびす講を終えた今時分、農家の庭先や田畑で見かける細身のダイコンがすだれのように下がった風景は、赤城山を越えて吹き下ろす冷たく乾いた赤城おろしの風土ならでは。

 西高東低の安定した気圧配置がもたらす、たっぷりの日差しと乾冷な季節風が、おいしい干しダイコンづくりにはどうしても欠かせない。そういえば今年は干し柿づくりに苦心したと、これは別の人から聞いた話。

 気温の上昇と水分は、干し物をつくる上での大敵。雨に当たって気温が高ければ、冬だろうとカビが発生する原因にもなるし、腐ってしまう。えびす講でも「今年は暖かい」が時候のあいさつだったが、経験豊富なベテラン農家たちが干しダイコンづくりに苦心をするほど、今年の気候はいつもとは違うのだと、改めて思い返した。

 欧州のパリではいま、約150カ国の首脳が集まり、地球温暖化対策について話し合う国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議、いわゆるCOP(コップ)21が開かれている。

 温暖化の要因となる二酸化炭素(CO)などの温室効果ガスの排出量を減らそうと、各国が削減目標を提出し、新しい枠組みづくりを目指すわけが、化石燃料を大量に消費して「豊かな暮らし」を享受してきた先進国と、それに追いつこうとしている発展途上国との間では、立ち位置が大きく違う。対立が生まれるのは当たり前で、その上で落としどころを探り合い、合意を取り付けられるかどうか、これまで化石燃料の恩恵を受けてきた国の首脳たちの外交手腕が問われる場でもある。

 エネルギー問題はいつの時代も紛争の種となってきた。自国の歴史を振り返っても、エネルギー資源を求めて他国に攻め入ったことが、戦争の要因となったことはたしか。そう考えれば、COP21とは、紛争の火種を大きくせずに済ませるための、各国の戦略の場であるのだと、とらえることもできる。

 化石燃料というエネルギー資源の偏在が、争いのもとにあるのだとすれば、より偏りの少ないエネルギー資源である太陽光や水、風などの有効活用は大事なポイント。暖かい冬の訪れを肌で感じながら、パリの会議の行方に思いを馳せつつ、自分にできる節電方法を考えてみる。
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