前向きになりたいという気持ちはだれもがいつでも持っている。知人はそれを「希望の声」と呼んだ▼希望の声はとても静かで、しかもかすかである。けれども、ちょっとしたきっかけさえあれば、すぐに頭ひとつ抜け出して、きっと心の声になって、ささやきかけてくれる▼若い人の自殺の報にふれるたび、彼は胸を痛めていた。「死を選択した純粋な思いを責めることはできないが、希望を持てという自分の心の声に気づくことができなかったのが気の毒だ」と言って▼ではそのきっかけはどうすれば持つことができるのだろうか。すると知人は「人の言葉に耳を傾けたり、本を読んだりして考えれば、きっとその存在が信じられるようになる。現実と向かい合い、あるいは折り合いながら、サテどこへ行こうかと行き詰まったら、本を開いてみるといい」と▼生や死について先人はみんな苦悩を重ね、自分に立ち返ることの大切さに満ちた本をたくさん残している。「読もうという気になったらそれはもうきっかけが見えたあかしなんだ」と、経験に裏打ちされた、人なつこい顔でうなずいた▼希望ということばを聞くと思い出す、あの穏やかな語り口である。(葉)
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希望の声
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