織都の歴史を背景に工業が発展し、製造業の産業集積のある桐生。培った技術でものづくりを得意とする企業は数多いが、OEM(相手先ブランドによる生産)が長い間主流だっただけに、市場に受け入れられる完成品をいかに作るかの発想は、やや苦手とする分野だ。デザイナーの視点でその弱点を補い、魅力的な商品づくりへと小規模事業所をステップアップさせる取り組みが、桐生商工会議所の仲立ちで進んでいる。
園田編織(桐生市川内町二丁目、園田順一郎代表)は1974年創業のニットメーカー。トリコット編み機でカーテンやマットなどの付属品になるフリンジ(房飾り)を生産していたが、需要縮小に伴い、20年前からストールづくりを始めた。気孔が多くふんわりした質感の出る野蚕糸を草木染めするのが特徴で、順一郎さん(68)が編み、妻の明江さん(62)が染めを担当している。
県繊維工業試験場から昨年紹介を受けた商工会議所工業課の清水純一さん(34)が品物のレベルの高さに着目。2012年から進めるプロジェクト「Room of KIRYU(ルーム・オブ・キリュウ)」への参画を打診し、市内在住のテキスタイルデザイナー・畠山陽子さん(37)の助言で新しい商品づくりに挑むことになった。
畠山さんが着目したのが、本業だった房の美しさ。その長所が最大限出るよう、フリンジ状の部分が際立つ編み組織と、流行に合った色使いを提案。園田さんが職人魂で応えた。黄や青、緑、赤など鮮やかな色は全て天然由来。糸染めした明江さんは「いいのを作ってくれました」と出来栄えに笑顔をみせる。
「組織が詰まりすぎていたので、『何を生かし、どこをそぎ落とすか』を一緒に考えた。織りではできない多色使いも提案しました」と畠山さん。園田さんは「いつもは自分だけの世界になってしまいがち。この編み方の発想はなく、始まりのアイデアをもらえた」と喜ぶ。
「ヒサゴストール」と命名したストールは、商議所が「Room of KIRYU」で出展するファッション展「rooms(ルームス)」(15日~17日)で披露する。
価格は1万800円(税込み)。出展後、桐生地域地場産業振興センターと桐生さくらやで市販の予定だ。
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