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小さなマーケットの魅力

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 先日、いくつかのフリーマーケットを訪ねた。規模の差こそあれ、限られた空間に売り場が並び、個人が手づくりした雑貨類や、すでに生産されていない懐かしい品々が、小さな店先を彩る。品物の陳列の仕方や店の装いなどに、店主のこまやかなこだわりが見え、味わいがある。あいさつを交わしながら、店を巡る楽しさに浸った。

 新鮮だったのは、桐生市本町六丁目商店街の「ふれあい市」。長いアーケード街の利点を生かし、屋根のある歩道でフリーマーケットを始めたのが、阪神大震災のあった1995年のこと。以来、名称など小さな変更を加えながらも、四半世紀にわたってアーケード下でのフリマを続けてきたが、今年はそのかたちを一変し、青空がのぞく広場へと会場を集約した。

 アーケード街のことも忘れない。主催者は商店街の個店を巡るスタンプラリーを開催。3斤分の食パンを景品に用意し、親子連れの参加意欲をくすぐった。効果は大きかったと聞く。

 同時開催の「一箱古本市」もユニークな試みで、小さな古書店の棚に並ぶ背表紙を眺めながら、そこに仕掛けられた出店者からのメッセージを読み解くような作業が、なんともいえず楽しい。店主との本談議を重ねながら、新たなつながりが生まれるようで、ほしい品物との出合いにとどまらない喜びがある。

 ものを自作するつくり手たちの出店が多いのは、最近のフリマの傾向のようで、以前のような「自宅で不用となった日用品を持ち寄り、必要な人に安価で提供する場」といった雰囲気はだいぶ薄まった。つくり手にとっては顔なじみに合う機会であり、新しい顧客を開拓する場。買い手にとっても、つくり手との会話を楽しみ、知らない店に出合う機会となる。インターネットの普及で、フリーマーケットのあり方は大きく変わった。最近は使い勝手のよいフリマアプリなども登場しており、物を購入するときだけでなく、売りたいときに簡単に出品できる仕組みも整いつつある。

 一方で、顔の見えるリアルなフリマの役割も、おそらく消えることはない。むしろ、どんなものを誰から購入したのか、物と人とが見える場として、存在感は増すのではないか。

 ほしいものを手に取り確かめ、信頼できる人から買い求める。地域だからこそできる商いの一つのかたちのはずだ。
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