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文章表現

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 「浜の真砂と五右衛門が歌に残せし盗人の種は尽きねえ七里ケ浜…」。河竹黙阿弥の歌舞伎「弁天娘女男白浪」の有名なせりふ。美しい娘から一転、盗人の本性を見せる弁天小僧の見せ場である▼この後段「青砥稿花彩画」の五人男そろい踏みや、「三人吉三」「切られ与三」の名せりふでも見られる七五調は、いいリズムだなあと思う。和歌や俳句と同じように、長い間、この国で育てられてきたリズムなのだなあと▼たいていの人は、何かを読むとき、声を出す。黙読でも、頭の中で声を出して読み上げている。日本語で育ってきた人なら、日本語で考える。そしてそれは、文字ではなく、声、音で考えるはず▼だから、難しい漢字が使われた文章を読むと、引っかかる。読めなかったりすると、そこで思考が止まり、もう興味が失せる。勉強不足ではあるのだが▼難しい漢字を使えば、見た目は美しい文章になるかもしれない。だけどそれは、伝わる文章ではないのかもしれない。その昔、詩人・白楽天は、詩ができるとまず、文字の読めない老女に読んで聞かせ、理解できなかった部分を簡単な表現に直したという。その作品が多くの人たちに愛された理由でもある▼年の瀬に、あらためて、伝えることの難しさ。(
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