「なぜ文化財指定されていないんでしょうか」。意外な事実に気づいてしまった、とでも言おうか。桐生祇園祭の豪華な鉾と屋台を見上げ、少し驚いたような表情を浮かべながら、彼は聞いてきた▼5年前の秋、出雲大社に隣接する島根県立古代出雲歴史博物館の学芸員が桐生を訪れた際に受けた質問。答えに窮したのを覚えている▼桐生祇園祭は360年続く桐生中心街の伝統行事。現在は8月の桐生八木節まつり期間中に行われ、幕末から戦前にかけて作られた鉾2台と屋台6台が現存する。どれも彫刻などで美しく飾られ、織物文化で栄えた桐生の象徴とも言うべき存在だ▼市は18日の桐生市議会で文化的価値の高さを強調。所有者である本町一~六丁目町会の意向を踏まえて文化財指定を協議するとした▼各町会とも高齢化が進み、人数的にも経済的にも、担い手不足は深刻だ。常設展示中の鉾2台は「曳き違い」などで目にする機会も多いが、屋台6台中5台はまだ蔵の奥に眠っており、組み上げには1台百万円単位の費用がかかる▼観光面でも再認識され脚光を浴びつつある鉾と屋台。伝統行事に支障のない形でどう保存活用していくか。具体策を練る時期に来ている。(針)
関連記事:
↧
どうする鉾と屋台
↧