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イベントを磨く

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 ファッションウイークの後半、まちなかを歩いてみた。パンフレットに掲載された多くの行事のうち、ほんのいくつかしか回れなかったのだが、久しぶりに顔を合わせた人と対話を楽しんだり、ほしいものが見つかったりと、気持ちをなごませてくれる出あいが重なった。

 22年も継続してきたイベントである。実行委員会や出展者たちは、蓄積してきたノウハウを生かしながら、残したい部分は継承し、改めるべきは見つめ直し、毎回こつこつとイベントを磨いてきたはずだ。裏方の苦労は見えにくいものだが、それでも毎回眺めていると、変化の方向性ぐらいは読み取れる。

 例えば、今回のパンフレットは前回のものよりコンパクトになり、折り方も単純で広げやすくなった。紙は薄くなったようだが、まちなかを散策しながら眺めるためには、むしろこちらの方が使いやすい。文字も読みやすくなったのではないか。

 前回のものが悪かったわけではないが、いいものを作らなければと、力を入れすぎているような雰囲気があった。今回はつくり手の満足よりも、使う人の利便性を第一に考えてくれているようで、好感が持てた。

 各行事の展示も、見せたいものが整理され分かりやすくなったのではないか。雑多な感じが売り場の楽しさを演出する場合もあるが、展示であるならばテーマに沿って見やすくした方がいい。作り手と製品との関係性、ものがたりに焦点を当てるのであれば、なおさらである。

 つくり手自身が製品の見せ方を工夫し、来場者と直接対話を交わす場面にも遭遇した。地元で暮らしていながら、どんな人がどんなものをつくっているのか、知らないことは多い。個人の名前で勝負する作家でなくても、会社という組織の中でいいものをつくり出そうと、創意と工夫で日々ものづくりに取り組んでいる職人たちが大勢いることにも、改めて思い至った。

 パソコンやスマートフォンを使えば、指先一つでほしい物が購入できる時代ではあるのだが、ならば自分はいったい何がほしいのかと、そこが見えにくくなっているようにも思える。

 つくり手と顔を合わせ、会話をかわし、製品を手にしたとき、これがほしいと気持ちが動く。人との出会いを楽しみながら、自分の価値観を広げるいい機会でもある。次回のファッションウイークにも期待したい。
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