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善意を行動に変える

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 23年前の1月17日、阪神淡路大震災が発生した。激しい揺れが100万都市を襲い、6500人もの命が奪われた。鉄筋コンクリート製の建物がつぶれ、高速道路や鉄道路線が倒壊し、各所に黒煙が立ち上る。映像や写真が伝える惨状を呆然と眺めたときの衝撃は、今も鮮明だ。

 被災者のために、自分に何ができるのだろうと多くの人が悩み、考え、行動を起こした。1995年が「ボランティア元年」と呼ばれるゆえんである。

 困っている人がいれば、その人の境遇や心情に気持ちを重ね、助けになりたいと思うのは自然なこと。ただ、思いを行動につなげるのは簡単ではない。

 阪神淡路大震災のときも、もどかしい気持ちを抱きつつ行動へと踏み出せなかった人は数多い。当時の自分を振り返っても、一歩を踏み出すまでには至らなかったのが実情である。

 水や食料といった被災地で必要とされている物資を届けたい、温かい炊き出しで励ましたい、義援金で支援をしたい。そういった気持ちを託せるだけの具体的な手段が見つかれば、行動を起こすことも容易になる。

 個人通信手段の普及が始まった頃でもあった。被災者やボランティアから多くの情報が発信され、善意を生かすためのさまざまな仕組みが生み出された。

 こうした被災者を支える仕組みはその後も、実際の災害現場で試行され、改善を加えられ、東日本大震災や熊本地震などの被災地では大きな力となった。

 少子高齢化が進むなか、私たちの暮らしはますます住民どうしで支え合わなければならない時代を迎える。それは地域といったくくりでとらえても同じなのではないか。個人間だけでなく、地域間で支え合うといった視点も大切になるはずだ。

 新潟県中越地震、能登半島地震、新潟県中越沖地震と、21世紀も災害の発生は続いている。こうした被災地では関西からのボランティアとよく出会った。「あのとき助けてもらったから」と、彼らは必ず震災で世話になったことを口にしていた。東日本大震災の被災地では、新潟県からのボランティアが同じ言葉を繰り返していた。

 思いを行動につなげる仕組みは情報機器の発展とともに拡充を続けている。根底には体験に裏打ちされた互助精神がある。困ったときは互いに支え合うという発想はおそらく、普段の暮らしの中でも役立つはずだ。
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