どんな仕事であれ、人の仕事ぶりには生きざまが表れる。取材の先々で、自分なりの考え方や将来設計を抱きつつ、真摯な態度でこつこつと働いている若者の姿に出あえばつい応援したくなる。働き方は人それぞれだ。
国会で、働き方改革関連法案をめぐる審議が行われている。
少子高齢化を「国難」ととらえ、それを克服するために、誰もが能力を発揮できる柔軟な働き方の仕組みへ、労働基準法制定以来70年ぶりの大改革を行うと、施政方針で安倍首相が第一に掲げた重要法案である。
同一労働同一賃金を実現し非正規雇用と正規雇用の待遇差をなくす。時間外労働に罰則付きの上限を設けたり、裁量労働制の拡大や高度プロフェッショナル制度を導入することで、効率的な働き方を促し、長時間労働を減らす。そんな骨子である。
労働者が仕事にやりがいを持ち、生き生きと暮らせる社会に向け、同一労働同一賃金や時間外労働の規制強化といった方針については、理解しやすいし、うなずける面も多い。
ただ、裁量労働制の拡大が業務の効率化や長時間労働の是正につながると言われても、それほど単純ではないだろうと、つい思う。こうした疑問を受け、首相や厚生労働大臣は、裁量労働制の方が一般労働者より労働時間が短いといったデータもあるのだと、野党に答弁したのだが、データの調査法や数値の算出法に問題点がみつかり、結局この答弁は撤回された。
それでも今回の働き方改革法案を見直す予定はないようだ。
国会の審議が分かりにくいと思う機会は多々あるのだが、理由の一つには、大事な法案の数々が一括りに束ねられてしまう事情がある。働き方改革法案は八つの法案を一括りにしており、すべてに目を通して十分に審議するには、どうしても時間が足りなくなる。11もの法案を束ねた安全保障関連法案の審議の際にも同じことを感じた。
少子高齢化に伴う労働力不足という「国難」を乗り越えるために国は戦略を考える。ただ、その戦略の中には、時に過労死の原因となるような長時間労働の解消を目指すという課題とは相容れない側面もあるはずだ。
人がより生き生きと働き、安心して暮らすために、大事なものとは何なのか。それを実現するために、国はいま何をすべきなのか。法案の精査を含め、さらなる審議を望みたい。
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