啓蟄を知っているかのように、虫が落ちていた。散り初めた桃の花びらに交じっていやがったから、桃のつぼみにでも潜んでいたのだろう。表飾りの大型内裏雛の脇に添えた桃花なので、雛さまを直撃しなくてよかった▼だいたい虫は苦手である。奥の寝所には小ぶりな段飾りをまつるのだが、ここには桃を添えていない。ゆえに、寝床に虫が侵入する心配はない。ことのほか厳しかったこの冬も湯たんぽの出番はなくなり、季節は移ってゆく▼思えば今季、スキーをしていない。大人になってからはもっぱらクロスカントリースキーで、純白の雪原を滑走するよりは逍遥して、裸樹が写す縞模様のなか鳥たちや獣の足跡と出合うのを喜びとしてきた。シカの群れに遭遇したのは奥日光だった▼うまそうだと眺めたわけではないが、ジビエには興味がある。シカやカモのほか、最近はクマやイノシシ(ウリ坊)を食する機会があり、北欧ではトナカイは牧場育ちらしいが美味だった。国内でも害獣として駆除処分するだけでなく食肉に利用しようという動きはある▼野生の尊い命をいただくには、病原微生物や寄生虫がいるため解体や調理の技術が必要となる。しかし放射能汚染は絶対にダメだ。(流)
関連記事:
↧
命をいただく
↧