里山の整備方法とその環境の大切さを学ぶ講座の間伐実習で講師の一人がぽつりと言った「切り倒した木は無駄がないようにしないと」。何気なくつぶやいたその言葉がとても印象に残った。当たり前なんだけど、何十年も山仕事を生業としてきた人が発すると何だかちょっと違う▼間伐では材を余すことなく使えるように、切り倒す前にきちんと逆算して刃を入れる位置を決める。それは経験から身にしみついた感覚で大切なこと。だから気負うことない穏やかな表情と語り口に、あんなに説得力があるのだ▼近く、「西表石垣国立公園」が拡大されて沖縄県西表島の全域が対象となるらしい。同時に葉っぱ1枚持ち帰るのも禁止する「特別保護地区」も広がる。政府が目指すのは「西表島独自の生態系の保全」で、見据えるのは「世界自然遺産登録」▼自然環境の保護・保全を考えるとき、法の下にあればわかりやすいし効果的。大きな意義がある▼でも「法律だから」と従うのは違う気がしていて、自分の経験を元にした言葉で、自然や生き物たちへの愛着とか畏敬の念とか、その多様な豊かさとか、話せるようにありたいなあ。たまにはそんな思いを込め、山や川や海を眺めてみるのだ。(並)
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