東京・目黒雅叙園の「百段階段」で今春も雛まつりが開かれている。第7回は「みちのく雛紀行」で岩手、宮城、福島の3県から雅な、愛らしい雛さまたちがお出ましだ。城主伝来の御所人形、豪商や醸造元の蔵に伝わる名雛、女流俳人が愛した澄まし顔、水沢くくり雛や三春張り子も▼ワビサビから遠い豪華絢爛な装飾美に満ちた7部屋のうちでも、最も大胆豪奢なのが「漁礁の間」。毎回メーンとなる展示空間で、桐生の石原富士雄さんの所蔵品が飾られたのを縁に、楽しませてもらうようになった。大震災から間もなく5年、みちのくの雛たちの静かな笑みが身にしみわたる▼女たちから女たちへ、天災や戦火や家運の変遷などをくぐり抜けて受け継がれてきた、小さきひとがた。3月3日は春まだ遠く旧暦で桃の節句を祝うから3・11には緋毛氈に鎮座していたろう。津波に流されつつ、奇跡的に戻ってきた雛たちもあり、受難の姿の痛ましさには涙するしかない▼それでも城下町や宿場町あげて蔵や町家の雛めぐり。春を寿ぐ心は旧倍して各地で盛んに行われる。女たちのもてなし心意気を会津で味わったことがある。さて、うちの雛たち遅れてごめん、そろそろ出番といきましょう。(流)
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