織都桐生の歴史を物語り、群馬大学理工学部キャンパスのシンボルである国有形登録文化財、工学部同窓記念会館が、今秋から耐震補強工事に入る予定だ。100年前の大正5(1916)年に完成した桐生高等染織学校の講堂と本館の一部を、昭和47(1972)年に現在地に移築した建物で、文化庁の指導と補助金を受け工事を実施。耐震補強と空調設備が主で、2017年10月以降に使用再開を見込む。この工事に桐生市は、地元自治体として寄付金1000万円を新年度予算に計上し、産学官の連携推進と幅広い利活用に期待をかけている。
記念会館は木造で、本館は2階建て、講堂は平屋だが2、3階くらいの高さの吹き抜けになっており、三方を桟敷が取り囲んでいる。曳(ひ)き移転後、1990年に屋根瓦をふき替え、外壁を塗装。98年に守衛所、正門とともに国の有形登録文化財になった。
同窓会本部や資料室があり、講堂は総会や講演会、コンサートのほか映画やテレビドラマのロケ、雑誌撮影などにも使われてきた。
しかし2013年の耐震診断の結果、構造耐震指標は「大規模な地震の震動および衝撃に対して倒壊または崩壊する危険性がある」という域で、同大では専門家による「保存活用計画検討委員会」を設けて調査、検討。文化庁の「文化財建造物を活用した地域活性化事業費」の国庫補助を受ける。補助率は最高50%。登録文化財のある大学でこの補助金を受けるのは、神戸大に次いで2例目という。
今年度は基本設計を実施中で、来年度の夏休み前に入札、10月から翌年の10月までの工事となる予定。総工費やその後の利活用について詳細は未定だが、大学では「桐生市と連携して、同窓会の工業会とも協議しながら使用方法を考えたい。桐生市民に有効に使ってほしい」とする。各界各層からの寄付金は引き続き受け付ける。
桐生市産業経済部産学官連携推進室では「創立100周年を祝って、大学といっそう良好な関係を築きたい。市民に親しまれている文化財の役にたててもらえれば」としている。
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