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多様化する就職活動

 来年3月に卒業を予定している大学生の就職活動がスタートした。経団連が示す採用スケジュールによれば、採用情報の公開が3月、企業の選考は6月解禁となる。選考開始時期は前年より2カ月前倒しされることになり、その分、学生たちが企業の情報を収集する時間は短縮される。そのため今年の就職活動は短期決戦になりそうだと、そんな見方が一般論のようだ。

 先日、群馬大学桐生キャンパスで開かれた合同企業説明会には、主催者側の募集予定を上回る476社の応募があったという。5年前に比べると7割も増えている。これまで採用を控えてきた大手企業の採用意欲が強く、いわゆる「売り手市場」になるといわれていたが、それを裏付けるような数字である。

 説明会をのぞいたが、企業の担当者たちが学部3年や修士1年の学生・院生を相手に、熱心で丁寧な企業アピールを繰り返していた様子が印象に残る。急速に進行する少子化の時代に、会社の将来像を描くためにも優秀な技術者を求めようとする企業側の意識は、相当に高い。

 一方で、学生たちもまた、売り手市場の傾向に安穏としているわけではない。技術者としての力量を試したいので海外勤務も視野に入れながら、自分の能力を生かし、さらに伸ばせる企業を探しているといった声がある一方、ふるさとの企業に就職し、地域社会のためにも活動したいと、そんな声も聞かれた。

 大手企業偏重の価値観にとらわれず、自分が将来どこで、どんな仕事をしたいのか、どんな暮らしを設計したいのか、考えている学生たちは多いようだ。

 学生と企業とが互いのことを事前によく知り、就職後のミスマッチを少なくするための取り組みもまた、着実に浸透しつつある。学生時代に短期間、企業で実際に働く期間を設けるインターンシップ制度などはその典型。大学と企業との共同研究を通じて、学生が社会人とともに仕事をする機会も増えている。

 説明会を主催する群馬大学工業会では、企業に就職した同窓生を窓口に、学生と企業とを結びつける取り組みにも力を入れ始めた。なによりも、先輩たちが培ってきた群馬大学理工学部というブランドに対する企業側の信頼が、これだけの参加数に結びついていることはたしかなこと。経済の先行きは不安だが、それはいつの世も同じ。実りある就職活動を期待したい。
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