明治期に日米貿易の先駆者として活躍した桐生市黒保根町水沼出身の星野長太郎・新井領一郎兄弟。幕末の思想家・吉田松陰の形見の短刀を託されて渡米し成功したという逸話をしのぶツアーが盛況だ。先週末に都内の旅行会社が、黒保根町の紅葉や温泉と組み合わせた日帰りツアーを初開催し、定員40人がすぐに満席となる人気ぶりだった。参加者たちは「(現在所在不明の)“松陰の短刀”が早く見つかってほしい」と逸話に思いをはせた。
ツアー参加者が訪ねたのは、同兄弟が明治7年(1874年)に出身地に設立した民間初の器械製糸場「水沼製糸所」跡。領一郎が渡米し、外国商人を介さない生糸の直輸出販路を開いた同兄弟ゆかりの地だ。
それを支えたのが、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」で注目された初代群馬県令の楫取素彦(かとりもとひこ)。その妻で松陰の実妹である寿(ひさ)が、渡米の夢を果たせなかった兄の短刀を渡米する領一郎に託した。
この逸話は、領一郎の孫で元駐日米国大使夫人のハル・ライシャワーが著書で紹介し、「花燃ゆ」でも描かれた。桐生市は先月、同兄弟の功績と逸話をイラスト入りで紹介する案内板を製糸所跡に設置した。
今回のツアーは都内の旅行会社「東武トップツアーズ」が首都圏で募集した日帰り旅行商品。桐生市からの提案を参考に、同兄弟ゆかりの地と、紅葉を楽しむハイキングと温泉入浴を組み合わせて企画した。
9月末の募集開始から1週間足らずで定員40人が埋まり、11月15日開催の次回ツアーも同定員が満員となる盛況ぶりという。
今回のツアー参加者は水沼製糸所跡の案内板を見ながら、現在は所在不明という“松陰の形見の短刀”に思いをはせ、「この逸話にはロマンがある」「早く見つかってほしい」と口々に思いを語っていた。
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