あらためて、浅草というまちは、できあがっているなと思う▼でかい提灯が飾られた山門から、狭い参道を抜けてたどりつく大きなお寺。かたわらには三重の塔も、神社も、鎮守の森もある。隅田川の水辺もあり、今時分なら、花見客でにぎわう。借景はスカイツリー。そこには数百年前から現在までの歴史と自然がある▼参道の両側に連なる小さな店には、これでもかといわんばかりの「ザ・日本」的な土産物や小物がぎっしり詰まり、歩きながら小腹を満たせるおやつもできたてだ。ちょっと脇に入ると、今度はすき焼き、てんぷら、すし、どぜうと、本格的に腹を満たせる「ザ・日本」的な食事処があり、少し進めば娯楽の中心、浅草六区もある。見る食べる遊ぶ、およそ全部そろっている▼東京五輪に向けどこも声高に「インバウンド」を唱えているが、浅草みたいな場所から客を引っ張ってこられるのかな、と思う。呼ぶなら相当本格的に取り組まないと勝負にならぬ。来ればラッキー、ぐらいなのだろうな▼「朝、市場はにぎわうが、夕方に人はいない。市場に好悪の感情があるわけではなく、求める物がないからだ」(史記・孟嘗君伝)。どんなにいいまちでも、求めるものがなければ人は来ないのだ。(篤)
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