桐生に残る歴史的建造物の保存修理を自分たちで手がけていこうと、桐生伝建修習の会(池田和夫代表)が始動した。建築設計士、大工、左官、建具職人、瓦職人、行政関係者26人が集まり、2年間の予定で実地研修、見学、実習を重ねる。初回の5月29日には桐生新町重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)で修復工事が進む明治時代創建の建物を見学、それぞれの専門性を生かして調査し、意見を集約した。
東日本大震災直後には本町一・二丁目地区内400軒の全戸調査をし、迅速で適切な修復工事の必要性を実感してきた池田代表(桐生市文化財調査委員、群馬県建築士会桐生支部顧問)。伝統建築の技術の継承を図るとともに、桐生の家屋の特徴や街並み形成のデータを集めて、今後長く続く重伝建整備を桐生の職人たちで手掛ける土台にもなる。
初回の研修では通りに面した主屋から作業場、居間、台所、座敷、庭園、そして蔵と、一定の区割りの上に並ぶ建物の内外を調査。土壁の様子から改築時期を推理したり、傷んだ建具の修理法を考えたり、板戸の薄さに往時の技術を見たり。専門職ならではの観察眼を光らせていた。
桐生高等技能専門校の牧野敏雄校長(72)も参加し「伝統的技法の実際を生徒たちに話したい。若い人たちに興味を持ってほしい」。大工の宮崎真作さん(39)は重伝建内の傾いた家を修復した経験もあり「木組みの家は安心だし化粧にもなる。定期的にメンテナンスすればずっと使える」と話す。
秋には土塗り壁の実習も計画。木舞(こまい)の竹の様子や縄の掛け方、土の産地などを崩れた土壁から観察して、この地域の昔からの技法で行う予定だ。
関連記事: