桐生市内の相生町と本町かいわいで火災が相次いだ。いずれも木造の建造物で火の回りが早く、建物は全焼した。相生町の住宅火災では死者も出ている。また、本町の火災では明治期に建てられた長屋が全焼した。重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)の中核施設で、特定物件にも選ばれており、「買場ふれあい館」として地域住民になじみのある建物でもあった。
懸命な消火活動によって類焼を食い止めた消防隊員らの行動には頼もしさを感じつつも、その一方で、被害の規模をより小さく食い止めるためにはどんな心構えが必要なのかと、考えさせられた火災でもある。
まずは自分の身や家人の命を守るための構えを見つめたい。それには出火をいち早く知ることがポイントになる。台所や寝室など、複数の火災感知器を効果的な場所に配置し、逃げ遅れを防ぐことが第一の要点。「火事だ」と騒ぐことで、周囲に火災を知らせることも大切だ。
火種が小さければ初期消火も必要になる。ただ、地域の防災訓練などで消火器の使用経験はあっても、いざ本番で使用する事態に遭遇することはまれで、火のまわりの速さに比べ家庭用の簡易消火器では不十分といった場合も想定される。炎が天井に届くほど大きくなれば、消火よりも避難を考えた方がいい。
廊下に置かれた荷物や家財道具が避難を妨げるケースもある。煙でパニックに陥った場合正しい判断は難しい。いつも使う出口への導線をすっきり保っておくことが避難を助ける。また、身体に不自由があれば、それを考慮した上で複数の避難経路を確保することも大切だ。
もちろん、1人暮らしの高齢者が増えている中で、地域住民どうしの共助は欠かせない。火災発生の際には、自分の身を守りつつ、初期消火や119番通報に臨まなければならなず、1人での対応には限界がある。複数の手があれば心強い。
エネルギーの利用は生活の質を高めてくれる。最近はガスこんろや石油ストーブなど、炎そのものを熱源として利用する器具から電気を使った機器へと、種類は多彩になっている。ただ、炎を使わずとも電気を使用すれば、そこにはショートや漏電などの危険がつきまとう。器具の経年劣化も身近な危機だ。
身の回りをきれいに暮らし、地域とのつきあいを大切にする。基本は変わらないはずだ。
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