もう二度と注目されませんように。密かに願って封印した資料がある。なぜならそれは、地域を二分する対立を繰り広げた末の“副産物”だったからだ▼再び注目が集まるとすれば、激しい対立が再燃するとき。そんな日が来ないことを祈りながら、ファイルの奥底に資料を仕舞い込んだ。11年も前のことになる▼その資料の名は「共同事業実施に関する覚書(おぼえがき)」。ごみ処理や消防、斎場などを共同処理してきた広域圏組合が、平成の大合併で桐生・みどり両市に分断されると決まったころだ。組合解散後の共同事業をめぐり激しく対立する両者。合併を妨害し合う“全面戦争”の危機を、寸前で回避して交わされたものだった▼そんな因縁めいた覚書が、再び注目され始めている。久しぶりに再会した3枚つづりの資料は、長い年月を経てすっかり黄ばんでいた。が、両市の共同事業を束ねる役割は、今も決して色あせてはいない。合併論議が白紙になった両市の間を、かろうじてつないでいるとも言える▼地図上の飛び地は確かに見苦しいが、共同事業の泥仕合はもっと見苦しい。両市民が互いに背を向け合えば、今度こそ正真正銘の飛び地になる。それこそが最も見苦しい姿だと思う。(針)
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黄ばんだ覚書
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