桐生みどり地区の県立高校再編整備計画が先日、県教委から公表された。
計画の内容を改めて確認すれば、「桐生高校と桐生女子高校を統合し、高いレベルの進学校を目指す新高校」と「桐生南高校と桐生西高校を統合し、大学進学をはじめ多様な進路を実現できる新高校」を、いずれも2021年4月に開校する。桐高・桐女の統合校は、現在桐高のある場所に、桐南・桐西の統合校は桐西のある場所に、それぞれ設置する。この秋にも新高校開設準備会を設け、教育課程や学校規模、校名などの検討を始める。高校数が変わるわけで、地域にとっては、1980年の桐西開校以来の大きな変化だ。
地域で、学校のあり方を考えることはそのまま、地域の未来像を考えることにつながっている。5月末から6月にかけ、本紙で連載した高校再編インタビューを読んでも、登場したほぼすべての人たちが、新しい高校への期待や理想、提言などを語りつつ、併せて、このまちの将来像についても言及していた。
戦後の復興期は遠ざかり、驚異的な経済成長を達成した時代も歴史上の出来事になりつつある。それでも大都市圏に若者が集中する仕組みは相変わらず続いている。こうした中で、地域と学校との関係を考えるヒントが数多く詰まった連載だった。
年齢や性別、生い立ち、社会的な立ち位置など、語り手によって視点は異なるものの、地域で暮らす一人の大人として、子どもたちにいま何を学んでほしいのか、高校に何を求めたいのか、そのために地域の大人たちは、社会は、どんな支援ができるのか。自らの教育体験と照らし合わせ、大人の側もこれまでの姿勢や価値観を問い直してみる、そんな時代が訪れていることは間違いないと思わせた。
ナショナリズムに対峙するのは郷土主義なのだと唱えていたのは、亡くなった鶴見俊輔氏だが、生まれ育った地域の歴史や自然、文化、広く風土を知ることは、あらゆるものが揺れ動いている時代にあって個人を形成するための大切な要素になる。
さまざまな組織が解体され、若い世代と地域社会との関係性が薄れる中で、高校をはじめ学校への期待は増している。学校関係者の負担も増えるだろう。ただ、学校がおもしろくなれば地域にもいい影響が生まれる。人口減少社会だからこそ、人を育てる努力を大切にしたい。
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