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動いている絵画

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 戦後70年、「戦争画」を問い直す機会が相次いだ。各美術館の企画展だけでなく、「世界のフジタ」藤田嗣治を描いた映画「FOUJITA」(小栗康平監督)も公開された。あまたの画家のなかでやはりフジタは断トツの存在として残り、「戦争記録画」「戦意高揚画」と一括りにすることはできないと実感する▼戦死した息子の位牌画「育夫像」(大川美術館蔵)を絶筆とした清水登之。栃木県立美術館「もうひとつの1940年代美術」で見た従軍画はしかし、絵画的実験精神の賜物だ。フジタの「アッツ島玉砕」は東京国立近代美術館で再見。厭戦気分でいっぱいになる▼乳白色の肌に面相筆の繊細な線で成功、パリ社交界の寵児となったフジタ。戦時の日本では逆にヨーロッパ戦争名画からの引用で土気色の死闘の群像。絵の前で手を合わせ泣き崩れる人々、賽銭箱が置かれフジタが敬礼したという▼小栗監督はフーフー(仏語でお調子者)と呼ばれたフジタを狂言回しとして、20年代パリと40年代の日本を描く。世界中の芸術家が集ったパリの暗い狂騒、近代戦争で追いやられる日本の深層。フジタの静かな悲しみが陽光に遍在し満ちて、ランスの礼拝堂の壁画に降り注いだ。(流)
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