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作り手の言葉

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 有鄰館で始まったアートビエンナーレの作品を眺めながら、目の前にある謎そのものを楽しんだ。例えば、煉瓦蔵に展示されているイングリット・レデントさんのリソグラフィーの作品は、赤とグレーの2色が強く印象に残る▼よく見ると、赤とグレーの濃淡にはゆらぎがあり、規則があるようなないような。厚く垂れこめた雨雲を眺めている気分にもなり、人が作り出した物とは思えなくなる。そうした作品はほかにも数多くあって、見ていて飽きない▼初日、会場を訪れた作家たちが自作について簡単な解説をしてくれた。イングリットさんの説明を聞いて、ゆらぎの正体が彼女の皮膚にあるのだと分かった。皮膚をスキャンし、それをもとに作品を制作する。作品の固有性は、作家自身の固有性の証しであり、身体の記憶でもある▼酒蔵で展示をしている望月厚介さんもまた、皮膚をスキャンすることで作品に身体の一部を取り込んでいる。こちらは物の表層に対する強いこだわりが見えるようで、興味深い▼作品という謎に向き合うスタンスも解釈も人それぞれだが、謎を解くためのヒントが見つかれば、また違った鑑賞の楽しさが生まれる。作家たちの言葉は、作品同様に刺激的だった。(け)
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